就労移行支援事業所 スキルアップスマイル
https://sus.stone-free.jp
定休日:土・日曜・祝日
受付時間:9:00~18:00
- 就労移行支援
四条烏丸の就労移行支援事業所「スキルアップスマイル」が試行錯誤しながら伝える、本当に大事なスキルとは?
京都市内のビジネス街の中心地、四条烏丸に就労移行支援事業所「スキルアップスマイル」があります。
「スキルアップスマイル」は発達障害や精神障害などの方への就労サポートを行っています。エンジニア1,600名が在籍し、多くのIT関連企業と提携している親会社エスユーエスが就労をバックアップしているのがひとつの大きな特徴です。
スキルアップスマイルに勤める北岡まさみさんと半井啓佑さんに事業内容についてお伺いしました。
なりたい自分に近づいてもらうためのサポート
サービス管理責任者の北岡まさみさん
北岡さん「利用者さんの面談を行い、アセスメント(課題分析)を通して、長く働き続けるため最大2年間かけて、どういうふうに取り組んでいくかの利用計画を立て、モニタリングを行い、 ご自身のなりたい自分に近づいていけるようにサポートしていくのが私の役割です。」
北岡さん自身はもともとB型の支援事業所で20年近く支援員として働いていたそうです。
訪問型職場適応援助者、生活支援員の半井啓佑さん
半井さん「大まかには応募対策とデザイン系のトレーニングを担当しています。また、障害でお困りの方により多く就労移行支援を知っていただけるように、大学や病院や他の支援機関などに訪問させていただいています。」
ウェブでさまざまなことをオープンにすることで誤解を解きたい。
利用したい方は何を見て連絡してこられるのでしょうか。
半井さん「主に2つです。1つ目はウェブやSNSを積極的に活用しているので、そこから来られる方が多いです。スキルアップスマイルのご利用者さまは20代や30代の割合が多いので、ウェブツールを活用しています。2つ目は私が大学や病院などにご訪問させていただいて、一緒にセミナーを開催しており、そこから利用につながるケースがあります。」
セミナーに足を運ぶ学生は多いといいます。
半井さん「発達障害の方であったり、いわゆるグレーゾーンと呼ばれる方など、学内でコミュニケーションに困っている方や、あるいは就職活動でつまづいた方などが年々増えている印象があります。」
実は今回のインタビュー前から、半井さんがスキルアップスマイルの公式YouTubeチャンネル「就労移行支援・定着支援事業所 スキルアップスマイル」で話されている様子を拝見していました。そのあたりも何か戦略的に活用されているのでしょうか。
半井さん「さきほどの話の続きになるのですが、コミュニケーションなどにお困りの方は、文字ベースではなかなか情報処理が難しい方が多いので、動画で支援員が伝えることによって、身近に感じていただけるのではないかなと思って企画しています。」
動画を見て見学に来る方も多いといいます。実際に事務所に来てもらうだけでなく、オンラインで参加してもらうパターンも用意して、身近に感じてもらえるよう工夫しているそうです。
特にHPでの「スキルアップスマイルで過ごす1日の流れ」などは秀逸です。またデザインなどのトレーニングの一部も公開されています。
半井さん「就労移行支援事業所って、利用検討をされている人でも、どうしてもハードルが高く感じる方が多いので、そのハードルをいかに低くするかにはこだわって、スタッフ同士で話し合って映像をつくっています。」
北岡さん「実際に関わる人がどういう人かや、事業所の雰囲気がわかるだけでも安心かなと思っています。」
スキルアップスマイル バーチャル事業所見学会
https://sus.stone-free.jp/tour360/
北岡さん「発達障害のある方の中には『(パソコンやデザインなどの)スキルを身につければ仕事できる』『この資格を取ればいける』と思っておられる方が多く、見学に来られる方でも、『パソコンが得意なのでプログラミングをやりたいです』と強い意志を持って来られます。確かに技術は必要なんですが、働くためには土台となる生活リズムや人とのコミュニケーション、といったことが必要ですよね。」
アンガーマネジメントなどを伝える理由。
そのため、カリキュラムの中にはアンガーマネジメントやリサーチタイムなども取り入れているといいます。
北岡さん「発達障害の方の特性の1つとして、気持ちのコントロールが難しく、突発的に『怒り』の感情が湧き上がることがあるのですが、人間関係をスムーズにするためにはできるだけ自分でコントロールすることが必要なので、アンガーマネジメントやセルフコントロール的な部分やアサーションの考え方など、トレーニングを考えるスタッフとどうすれば伝わるのかを悩みながら取り組んでいます。」
リサーチタイムは制限時間内にデータを集めるスキルを伸ばすためのトレーニングなのだとか。
北岡さん「時間配分やペース配分が苦手な方が多いので、指示通りのことをしたり、期限を守るのは絶対必要だということをなるべく伝えるようにしています。」
就職先は事務職が9割。
就職先はIT系が多いのでしょうか。
半井さん「9割は事務職なんです。この数年はプログラミングやデザインの仕事をされる方もおられますが、求人そのものが事務職の割合が多い状況です。」
北岡さん「事務職だけどプラスアルファでITができるというのが強みになっている状況です。就労移行を卒業されてからも6ヶ月後からは定着支援が入ります。引き続き定着支援事業を受けたい方はもう一度契約させてもらうかたちです。」
ふたりに印象に残る利用者さんをお聞きすると、返ってきた答えは同一人物でした。
北岡さん「通信制の高校の方からの紹介で、生活リズムがちょっと乱れていた利用者さんでした。」
半井さん「彼には早い段階からJava言語の資格取得を目指すという目標があって、半年ぐらい集中して勉強し、資格を取ったんです。そのタイミングである企業から声をかけていただいて実習に行ったんですが、コミュニケーションの部分や報告連絡相談がしっかりできるというところを評価いただいて、今働きはじめたところです。」
人生を充実させるために必要なことを伝えていきたい。
さまざまな角度から利用者さんをサポートしておられる様子ですが、今後取り組んでいきたいと考えていることはどんなことでしょうか。
北岡さん「もちろん就職してもらうことが支援の目的ではあるのですが、やっぱり生活していく中で、働くだけでなく余暇が充実していることも重要だと思います。今は月に1度は外出やリフレッシュの機会をつくったりしてるんですけど、今後は買い物に行っていっしょに料理をするとかしてみたいと考えています。」
これまでに近くのお寺や二条城、京都国際マンガミュージアムなどに足を運んだことがあるそうです。
北岡さん「趣味がない方も多く、仕事とプライベートのオンとオフの切り替えができず、しんどくなられる方が多いんです。目的がなければ家を出ないという方もおられるので、リフレッシュトレーニングではさまざまなことを行い、余暇につながる何かのきっかけになればと考えています。直接仕事にはつながらないかもしれないけれど、人生を充実させるために必要なことを伝えていきたいです。ウォーキングを楽しみにされている方が多い印象ですね。働くことだけが人生ではなくて、いろいろ楽しいことも含めて伝えていきたいと思っています。」
スキルアップスマイルの活動に関心をもった方はぜひLコネクトまでご連絡ください。どんな内容でもお気軽にどうぞ。
取材・文/狩野哲也
取材日/2022.07.13