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  • 京都府 若者等就職・定着総合応援事業(実践的就職支援事業)

カフェや食品加工場で利用者の自信を育てる。サザン京都(城陽市)、さぴゅいえ(宇治市)での就労支援で大事にしている最初の2週間とは?

社会福祉法人 南山城学園

宇治市に、野菜たっぷりの手づくりハンバーグやカレーなどが味わえる「おいしい野菜のカフェ さぴゅいえ」があります。


(近鉄小倉駅とJR宇治駅のちょうど中間あたりにあります)

「さぴゅいえ」は社会福祉法人 南山城学園・地域支援福祉センター宇治小倉の就労移行支援事業所です。南山城学園は1965年に知的障害のある方たちの小さな入所更生施設からはじまり、さまざまなニーズに対応しながら障害者支援施設や保育園、診療所、デイサービスセンターなど京都や大阪に40ヶ所以上の事業所があります。


(写真は「さぴゅいえ」ウェブサイトより)

同じく南山城学園が城陽市で運営する若年者等就労支援拠点「サザン京都」の主任の菊山さんに京都府の南部地域でひきこもり支援、就労支援を行っている2つの施設についてお伺いしました。


(サザン京都 主任 菊山さん)

「今4時間目の講義がスタートしてますからご案内します」と紹介いただいたのは2階の一室。京都府の令和4年度若者等就職・定着総合応援事業のビジネスマナー・業界別基礎知識を学ぶ講義の真っ最中でした。


(2F多目的室での講義の様子)

受講生は現在6名。就職を希望している35歳までの方と、就職氷河期世代で就活中の方(35〜54歳)が対象で、約2ヶ月間、ビジネスマナーや福祉、食品加工、接客などの業界別基礎知識の講義を1ヶ月、企業での職場体験を1ヶ月受講できます。さらにその後、希望すれば就活支援や職場定着相談を2ヶ月ほど実施してもらえるのだそうです。

元ひきこもり経験者とともにつくった、社会人基礎力が身につくプログラム。

「特に私たちは最初の2週間を大事にしています。プログラムやテキストの大半を私が担当しているのですが、2つのことを最初の2週間で伝えるようにしています。ひとつは『働くとは?』ということ。もうひとつは『ヘルプサインの出し方』です。特にひきこもり経験者の人にとってはヘルプサインの出し方、つまりSOSの伝え方については特に力を入れています。今までは職場でそれができなかった人たちなので、ストレスコントロールを教えるようにしています。」

「ヘルプサインの出し方」については、その一部を元ひきこもり当事者で現在サザン京都の職員の方が制作したそうです。

「サザン京都の職員である彼に、元当事者としてしんどいと感じたエピソードをテキストに盛り込んで伝えてもらっています。しんどいのは自分だけじゃないし、これをつくった職員は人前で話す際、吐いてしまうほどの人物だったのに、今ではサザン京都の中でも優れた支援者です。ほんとに人は変わるもんだと日々彼の活動を通じて私も実感してるので、そういった成功事例を話しています。」

これらの講座で自分の得意なことが何か、自己理解を深めて1ヶ月で自信がつくといいます。

「2週間を振り返って気がついたことや、自分のいわゆるキャッチコピーなどを考えてもらって発表してもらう時間をつくっています。『私はこういう人間です。こういうスキルがあります』と語る時間で、人前で話すことを極端に恐れる方も中にはいらっしゃるのですが、全員ができるようになるし、これを受けただけでも、ものすごく本当に変わります。」

もうひとつ特徴的なことが、「ライブ形式であること」と、菊山さんは付け足します。

「テキストを読み上げるだけの説明型の授業ではなくて、テキストに書いてないことを話す時間の方が長いです。もちろん私の失敗談も話しますし、受講生たちのその時々の様子を見ながら、眠そうにしてるなと思ったら、いろんな言葉を問いかけて、発言しやすい状況をつくります。」

最初は緊張して菊山さんと目をあわせないようにしている人もいますが、少しずつ発言しやすくなる工夫をしているそうです。

「例えばHappy Thingsという小さなことでも良いので昨日うれしかったことを発表して、みんなでシェアする時間を朝に15分ほどつくり、それから授業に入るので、プラスの気持ちのまま授業に入っていくことができます。自主的にこの場に参加している、誰かに言われたからここに来てるとかではなくて、自分のためにやってるんだということが自然とわかって、なおかつきちんと生活を送っていく上で必要なことが身につくような内容にしています。最近では市役所の方などが見学に来られることもあります。」

場面緘黙症の利用者が話せたときの感動。

菊山さんが印象に残っている出来事として、こんなエピソードを教えてくださいました。

「以前、場面緘黙(かんもく)症の方が講義を受けて『自分は過去こうだった、でもここに来てこんなふうに変わった』と発表されたときは、ちょっとじっとしていられないぐらい感動しました」。

このプログラムの中では「笑われない」「怒られない」という安心感が自信につながっていくと菊山さんは語ります。

「実際就職してしまうと、もう安心安全とは100パーセントは言いきれないじゃないですか。だから、少なくともここで訓練をして、その環境の中に身を置いて、ちょっとしたストレスがかかるときに、どんな風に自分が振る舞っていけばいいのかをちゃんと伝えておけば、ちょっとぐらい転んで怪我しても、すぐに立ち上がれると思いますね。」

サザン京都の取り組み。

京都府の令和4年度若者等就職・定着総合応援事業は城陽市に拠点のある若年者等就労支援施設「サザン京都」が京都府からの委託で実施している事業で、「サザン京都」は厚生労働省の事業である「地域若者サポートステーション(以下サポステ)」にも取り組んでいます。

サザン京都には他にも2つの事業があります。

1つ目は中間的就労支援事業です。すぐに就労することが困難な人を対象に、就労トレーニングを通して日常生活の自立や社会参加ができるようにサポートする事業です。大きくわけて清掃作業や農作業の雇用型と軽作業中心の非雇用型があります。

2つ目は京都府からの委託事業のひきこもり・訪問応援「チーム絆」の取り組みです。ひきこもり状態にある方やそのご家族の身近なところで訪問や相談に対応しています。

「サザン京都は京田辺、宇治、木津川、伏見のハローワークと連携しています。ハローワークからサザン京都の取り組みを評価していただいていて、いま参加されている6名の方はハローワークからサザン京都に相談があった方たちばかりです。」

さぴゅいえでの最長2年間の訓練が自信につながる。

ここからは就労移行支援事業所である「さぴゅいえ」自体のひきこもり支援について尋ねます。

「さぴゅいえ」はカフェと食品加工の工房を備えた施設であり、その中で就労に必要なトレーニングを提供しています。利用期間は2年間。体力や対人技能、社会スキルなど個別の課題に応じたプログラムを実施。利用定員は10名。トレーニングは基本平日ですが、接客訓練については必要に応じて土曜日も実施しています。

昼食については無料で食べられ、訓練手当として月5000円ほど支給されます。

就労トレーニングについては9時45分に通所して、9時50分に朝礼があり、10時からはカフェか工房で働きます。

カフェでは清掃や接客補助、食器洗浄などを行い、工房では野菜の洗浄や皮むき、材料の計量などを行います。

「将来いろいろな会社やお店、事業所で働くための訓練ができます。」

南山城学園の事業に関心をもった方はぜひLコネクトまでご連絡ください。どんな内容でもお気軽にどうぞ。

取材・文/狩野哲也
取材日/2022.06.23

団体について

  • 名称(URL)

    ●社会福祉法人 南山城学園 サザン京都
    http://southernkyoto.com/
     定休日:日曜・祝日
     開所時間:10時~17時

    ●コーヒーとお料理のお店 カフェ さぴゅいえ Sappuyer
    https://minamiyamashiro.com/sappuyer/

     定休日:日曜・祝日
     営業時間:10:00~15:00 ランチ 11:00~14:00

  • 所在地

    ●社会福祉法人 南山城学園 サザン京都
     〒610-0121 京都府城陽市寺田水度坂15-170
     JR奈良線「城陽駅」から徒歩約3分/近鉄京都線「寺田駅」から徒歩約15分

    ●コーヒーとお料理のお店 カフェ さぴゅいえ Sappuyer
     〒611‒0021 京都府宇治市宇治蔭山9番地の11
     地域福祉支援センター宇治小倉内
     JR奈良線「宇治駅」から徒歩約10分/近鉄京都線「小倉駅」から徒歩約15分

  • 京都府事業

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  • 運営法人

    社会福祉法人 南山城学園
    https://minamiyamashiro.com/

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