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  • 京都府 若者等就職・定着総合応援事業 (基礎的就職支援事業)

夜を乗り越えられる居場所をつくる。京都YWCAのカフェを使った多様な取り組みとは。

公益財団法人 京都YWCA

京都市上京区、御所西側の地下鉄丸太町駅から歩いて10分ほどの場所に京都YWCAがあります。YWCAはキリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を超えて力を合わせ、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界の実現を目指す国際NGOです。

京都YWCAは2023年に創立100周年を迎える組織であり、子どもから高齢者まで、多様な文化的背景をもつ人々が交流し、協働する「多世代・多文化ふれあいコミュニティづくり」に取り組んでいます。

京都YWCAの施設は本館、別館のサマリア館、あじさい保育園で構成されていると職員の御前(みさき)麻里さんと山本知恵さんが話してくれました。


写真右/御前(みさき)麻里さん 写真左/山本知恵さん

施設の全体図はこちら。

ひきこもり支援の取り組みについて詳しくお尋ねします。

自立援助ホーム「カルーナ」

本館3Fにある「カルーナ」は社会的養護を必要とする若い女性を対象に、安心して暮らせる生活空間を提供し、自活・自立を支援する自立援助ホームです。

御前さん「現在6名の方が入居されています。基本的に個人からの依頼ではなく、児童相談所などから、受け入れ可能か問い合わせがあります。」

入所後のプロセスはひとりひとり違います。学校に行っている人の目的は卒業であり、仕事を探している人は、仕事探しが目的となるそうです。山本さんは「就”職”支援ではなくあくまでも就”労”支援なので、単に仕事につくことが目的ではない」と言います。

山本さん「多くの子たちは、とにかく今、家での養育が難しいということで来ているので、就労せざるを得ないことがほとんどなんです。15歳、16歳で、周りの子たちは遊んでいるのになんで自分は働かないといけないのかと、本人たちはあまり納得していないことが多いです。」

そういった若い人たちと一緒にアルバイトを探すために、履歴書の書き方や電話のかけ方、バイトの辞め方なども伝えるそうです。

御前さん「そもそも誰かと一緒に働くことに対して不安があるとか、そういう場合も多いんです。」

カルーナでは、朝ごはんと晩ごはんを提供することになっているものの、人によって起きる時間がバラバラなんだとか。まずは生活を立て直していくことを意識しつつ、次のステップとして「働く」というステージがあるとのことです。働きはじめても長続きしない場合もあり、次の職場を探すまでの間のサポートとして、京都YWCAが運営するカフェで働くこともあるそうです。

ボランティアチームが運営するカフェ「うららかふぇ」

本館1階の買い物コーナーを横切り、保育園横の廊下を抜けると、ヴォーリス建築で有名なサマリア館があります。そのサマリア館の1階が「うららかふぇ」です。


写真は「うららかふぇ」の日替わりメニュー(京都YWCAのFacebookページから引用)

現在、主にボランティアのお母さんたちが運営しています。

御前さん「カルーナで生活する人の中には、こちらで接客や調理、皿洗いなどスタッフといっしょに参加する人もいます。5時間働いてもらい工賃をお支払いしています。多文化共生ということで、外国人の方や親御さんが外国ルーツの方、まだ日本語が流暢でないけれどもゆくゆくはアルバイトを考えておられる方など、いろんな人が働いています。」

カフェは基本的にボランティアのお母さんたちが運営しているため、就労支援というかたちで来る若者にとっては、中高年のボランティアスタッフの女性と一番接する機会が多いといいます。

御前さん「中高年の女性たちと接する中で、カルーナに来る若者たちも成長していく。家庭とも学校とも違う、第三者的な関わり方をしてくださっている感じがします。」

取材当日に働いていたAさんは、この仕事が楽しいといいます。

Aさん「2階のサラームに住むおばあさんたちが毎日来てくれて、いろんなお話をしてくれます。夜ご飯がおいしかったとか、サラームに入る前はどうやって過ごしていたのかとか聞くのが楽しいです。」

ちなみにAさんはカルーナに入居されている方ではなく、入居者の友だちとしてこの場所に来るようになり、家庭環境も近いことから「うららかふぇ」で働くことになり、定期的ではないものの、2年近く関わっているのだとか。何かの制度に縛られることなく、困っている人をいろんなカタチで受け入れるのが京都YWCAのスタイルのようです。

セーフスペース「YここKitchen」

ただ、「カルーナ」や「うららかふぇ」だけでは困っている人たちの課題が解決しないため、2022年4月から「YここKitchen」という夜ごはんをいっしょに食べるというプログラムをはじめたといいます。

対象者は小学生以上35歳以下で、うららかふぇでランチタイムが過ぎたあたりから行われます。4月5月は試行錯誤しながら開催し、6月からは週4回定例で行っているそうです。

御前さん「食べるものに困っていて、居場所が必要な方が多いのが現状です。自分なりにやっていける方もいるんですが、なかなか生活の中でご飯を食べていないだとか、眠れていない方もいます。切迫して、緊急事態になってから連絡が来ることもあるので、もう少し日常的に関わりを持てたらキャッチできるんじゃないかという思いがあります。」

少ない日はひとり、ふたりという日もありますが、月曜日はさまざまなルーツの子どもたちが集まる学習支援プログラムがあるため、その流れで10人ぐらい参加している日もあるといいます。御前さんは言葉を選びながら続けます。

御前さん「なんと言いますか、心身の状態が伴ってないけれども、ちょっと誰かと会って話をしたり、ご飯を食べたりしたいというニーズもあります。昼夜が逆転してしまって、昼間や決まった時間に起きることが難しい方もいるため、YここKitchenの時間帯なら居心地良く過ごせるという面もあります。」

そもそも御前さんご自身は、この仕事をしようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

御前さん「女性の支援に関わる仕事ができたらいいなと思っていました。学生の時にジェンダーなどについて学ぶ機会があったので、そこにフォーカスして何かできたらと考えていたのがきっかけです。」

そうしてさまざまな背景をもつ人たちが集うカフェの担当になって7年。「接客を経験し、アルバイトを探して次のステップへとスムーズに進む人もいるけれど、階段をのぼるように次のステップに行ける方ばかりではない」と言います。

御前さん「いったんアルバイトをしてみたものの、うまくいかなくて「またカフェに来てもいいかな?」という人もいます。そういう人が戻ってきやすい場所でありたいです。」

夜を乗り越えることの難しさ

カルーナに来る方の中には睡眠のバランスが崩れて、朝の決まった時間に起きられない方も多いため、まず朝起きてくるための声かけからスタートするといいます。

御前さん「夜をどう乗り越えるかということはみんな苦労しています。だから、どうしてもこの日は起きて『うららかふぇ』に行きたいと思ったら、一睡もせずに来る人もいます。」

それほどまでしてカフェで働きたい理由はなんでしょうか。

厨房でボランティアで働くお母さんたちと話すのが利用者にとって居心地の良い空間になる

御前さん「ボランティアや常連の方など、この人に会えるっていうのがわかってるっていうのもありますし、この日は行くと言ったからという責任感もあるかもしれないんですけど。多分本当にしんどいときは、そもそも部屋から出られないので、私の中のバロメーターとしては、ここに来るだけでも今日は体力、気力がある、と感じます。」

Aさんが前に手を怪我してお店に立った日は、会う人みんなが「大丈夫?」と声をかけてくれたそうです。この場所はボランティアの女性たちの支えもあり、ぬくもりのある空間になっていると感じました。

京都YWCAに関心をもった方はぜひLコネクトまでご連絡ください。どんな内容でもお気軽にどうぞ。また、近くを訪れたらぜひ「うららかふぇ」に立ち寄ってみてください。

取材・文/狩野哲也
取材日/2022.06.28

団体について

  • 名称

    (運営法人)
    公益財団法人 京都YWCA
    https://kyoto.ywca.or.jp

    ●自立援助ホーム カルーナ
    https://kyoto.ywca.or.jp/calluna/

    ●居場所食堂 うららかふぇ
    https://kyoto.ywca.or.jp/cafe/

    定休日:月・日曜・祝日・YWCA休館日

    営業時間:11:00~16:00 ランチ 12:00~14:00(なくなり次第終了)

  • 所在地

    〒602-8019 京都市上京区室町通出水上ル近衛町44
    地下鉄烏丸線「丸太町駅」から徒歩8分

  • 京都府事業

    若者等就職・定着総合応援事業 (基礎的就職支援事業)

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