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働きたくても働けない人に働ける環境をつくる。就労継続支援A型事業所「ALBUM」で、高まり続ける自己肯定感の理由とは?

就労継続支援A型事業所 ALBUM

京都市内の五条通りには「事務機のウエダ」のロゴが目印の建物が北側と南側に2つ存在します。


(ウエダツインタワービルは五条通りの烏丸と河原町の間にあります)

今回訪れたのは株式会社ウエダ本社・北ビル4階の就労継続支援A型事業所ALBUM(アルバム)です。


(エレベーター内。付箋でお出迎えの文言が!)

「ALBUMは働くことを通して、自分らしさや自信を再発見する場所です」と所長の小島拓也さんはいいます。今回は小島さんにALBUMについて尋ねました。

いっしょに働くメンバーの8割は、就労困難な状態にある人たち。


(ALBUMを運営する株式会社MIRISE(ミライズ)所長の小島拓也さん)

「就労困難者の雇用をつくる目的で運営しています。主にネットショップを運営しているのですが、メンバーの8割が病気や障害がある、就労困難な状態の人たちが働いているというのが特徴です。」

ALBUM内には大きくわけて2つのチームがあり、自社のボードゲームのネットショップを運営しているチームと、企業からの委託で、デザインやホームページ・動画の作成をしているチームです。

スマホ向け携帯ゲームアプリが全盛の時代にボードゲームに特化しているのは興味深いですが、最初からボードゲームに特化したわけではなく、開所時は文房具の取り扱いから始めようとしていたのだとか。

「障害がある方の面接を進めていた中で、たまたまボードゲームが好きな人がいて、『どうせ仕事するのであれば自分たちが楽しく感じられる、ワクワクできるものが良い』と思い、競合比較もした結果、ボードゲームなら勝負できるかも、と思って着手したところ、運良く事業が軌道に乗りました。」

ゲーム性だけでなく、インテリアとしての価値も高めたり、企業や就労施設の課題に応じてボードゲームを活用したコミュニケーションの提案なども考えていると小島さんはいいます。

仕事があるから雇用するのではなく、雇用してから仕事をつくっていく。

前述のボードゲームを使った事業のエピソードのように、「障害のある方の状況にあわせて仕事をつくっていく」のがALBUM流のようです。

「もちろんネットショップの仕事だと思って入社される方たちが大半なのですが、雇用を進めていく中で、たまたま芸大出身でイラストやデザインが得意な方が多く、その人の得意なスキルを生かして『パワーポイントのスライドをつくってみる?』とか『名刺のデザインしてみる?』とできることをカタチにしていくうちに、デザイン案件や動画案件、ホームページ制作案件が入ってくるようになったんです。」

SDGsなどのキーワードが身近に浸透しつつある社会背景も追い風となり、声をかけてもらえているのではないかと小島さんは分析します。

「社会的な状況だけでなく、立地条件も大きく、働く環境の総合商社ウエダ本社さんのビル内に事業所があり、ウエダ本社さんに来社された企業の方をウエダ本社さんの社員の方が案内してくださることで生まれている機会もあります。道路の向かい側の南ビルの地下に現在ボードゲームを通じたコミュニケーションができるスペースをつくっているところで、ここは主にビルに入居されている企業さん同士が楽しむ場として利用されるのですが、イベントなども考えています。」


(南ビル地下1階のスペースに準備中。)

あの頃の自分がほしかったもの。

働きたくても働けない人に、働ける環境をつくり続ける小島さん。その背景を尋ねると壮絶な過去がありました。「新卒で入社した東京の不動産ベンチャーで上司にキャッシュカードを管理され負債をかかえ、自殺を考えたことがある」と語ります。

とある自殺の名所で崖の上に立ったそうです。ただ、命を絶つことはできず自宅に帰ったところ、別の会社の先輩から連絡があり、先輩に正直に自殺を考えた経緯を話したことが転機になったそうです。

「それまで話すことで誰かから責められる・攻撃されると思っていて、弱い自分を見せることができず、親にも言えなかったのですが、自分が「弱さ」をオープンにしたその先には、すごく温かいものが待っていたと感じ、「弱さを語ることは自分らしいことだ」と気づきました。自分自身は鬱になって、自宅マンションの部屋がゴミ屋敷状態でした。ひとまず滋賀県の実家に帰ったんですが、すぐに仕事をしたわけではなく、しばらく家でぼーっとしたり、家にいても家族に気を使うので、図書館で本を読んだりしていました。その中で少しずつですが、自分のような就労困難な人を支えたいと思ったんです。」

ハローワークに行き、失敗した原因を自分で分析しながら就職活動をする中で出会ったのが福祉業界でした。

「最初は就労支援ではなく、成年後見といわれる仕事で、認知症の高齢者や知的障害者、精神障害者などで、物事の判断能力が不十分な人たちの権利を護る仕事でした。そこで相談員として数年間経験を積んで、いくつか転職を重ね、就労支援も学び、最初に福祉事業のirodoriをつくりました。」

irodoriは円町にある、同じく就労継続支援A型事業所です。定員がいっぱいになりましたが、まだ働きたい人のニーズがあるため2つ目の施設としてALBUMを開所したそうです。

採用したいのはこんな人。

採用したい人はどんな人か尋ねると「働きたいという思いがある人」「人柄がいい人」「過去に辛い体験があるけど、自分の人生をよりよくしていきたいと考えている人」という答えが返ってきました。

面接ですぐにわかることではないため、いきなり面接するわけではなく、一度見学に来てもらい、その後、体験実習してもらうそうです。現場で実際に対応した職員など、ほかの人の意見も聞きつつ、最終的に採用を決めるのだとか。

職員同士で情報を共有するのは日課。

職員同士の会議は毎日行われ、「ちょっとした行き違いがあった」などの情報が共有されるといいます。このような対処などを考えると職員に専門的な知識が必要そうなものの、意外にもALBUMには福祉経験者は少なく、全体の8割は未経験者であるそうです。小島さんは「福祉の専門性があるにこしたことはないものの、人間性が上回る」と話します。

ボードゲームの事業が軌道に乗った話などをお聞きすると「順風満帆では?」と思いましたが、「毎日スランプです」と小島さんは苦笑します。

「例えば働いている社員から『今から死にます』というメールが届くこともあります。ぜんぜん何でもないことでパワハラだと言われることだってあります。これは日常のことで日々スタッフで悩みながら寄り添っています。仕事面だけでなく、例えばひとり暮らしをはじめたところ、隣の人の生活音が気になって体調が崩れたといったケースもあります。だから職場環境だけでなく、生活環境もすごく大事ですし、それが就労にも影響してきます。」

また、どんな仕事も必ず職員がチームに入っているため、何かの拍子に社員が調子悪くなった場合は少し休憩時間をつくってみたり、早退してリフレッシュしてもらうなど安心して働ける工夫をしているそうです。

取り組みを見える化し、モチベーションにつなげたい。

「社員にとって安心して働ける環境だけでなく、成功体験を積み重ねていけるような状況もつくっていきたい」と小島さんは語ります。

「これまでは決定事項だけを社員に下ろして仕事していましたが、今は決定に至るまでのプロセスから入ってもらっています。全員ではないけれど、こういうことが大事かと思っています。」

自分たちが取り組んだことを見える化していき、見える化することでモチベーションにつなげていくことを大切にしているそうです。

「10数年前のしんどかった自分の、『あのときこういう支援や会社があったら良かったのに』という思いが投影されているのかもしれません。コミュニケーションコストはめちゃくちゃかかっていると思います。自己肯定感という言葉があるけれど、自己肯定感をあげていくには自己受容ができないとあげられないので、ありのままを認められるような状況をつくっていきたい。ネガティブな感情をもってもいいんです。ありのままを認められるような場所が足りていないと思うので、そういう環境をつくっていきたいなと考えています。」


(ALBUMでは取材に訪れた人といっしょに記念撮影するそうです)

過去に苦しい思いをした代表がいるからこそ、同じようなつらい体験をした人にとって過ごしやすい職場なんだろうと感じました。「ALBUMに興味をもった!」という方はぜひLコネクトまでご連絡ください。どんな内容でもお気軽にどうぞ。

取材・文/狩野哲也
取材日/2022.06.21

団体について

  • 名称

    就労継続支援A型事業所 ALBUM
    https://mirise-album.com
    定休日:土・日曜・祝日
    受付時間:9時~18時

    運営会社
    株式会社MIRISE(ミライズ)
    https://gr.mirise-album.com/

  • 所在地

    〒600-8103 京都市下京区五条通堺町西入塩竈町363 ウエダツインタワービル4F 地下鉄烏丸線「五条駅」から徒歩約5分

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