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教えるのではなく、教わる。京丹後市の「tango nonno nonna」が考える、ソーシャル・コミュニケーションケアの未来。

株式会社 tango nonno nonna

京丹後市の国道312号線沿いにある複合型施設「tangoミモザ館」は、「仕事と子育てと介護」を応援する複合型のソーシャル・コミュニケーションケアサービスを提供しています。運営するのは株式会社tango nonno nonna(丹後のんののんな、以下「のんののんな」)。

「のんののんな」は介護事業や弁当の宅配サービス、保育園の経営、京都府介護員養成研修や介護施設の運営など幅広く事業を展開されています。


代表の岡垣良雄さん。

tangoミモザ館(令和3年7月開設)は新しく、「子ども、若者、お年寄り問わず、世代間交流が図れる交流の場としてつくった」と代表の岡垣良雄さんはいいます。

福祉に携わるきっかけは、女性へのいじめ問題

岡垣さんが生まれたのは、今は合併して京丹後市の一部となっている近畿最北端の丹後町です。岡垣さんは「貧困の差もあれば、いろんな家庭の事情から、なかなか社会に適応しにくい方が身近にいた」と言葉を選びながら続けます。

「特に、女性へのいじめと考えられる事例など、私が知る保育所の中でも職場内での様々な問題があったので、どんな家庭の事情があっても、安心して預けられる保育所が必要と感じて、職業選択する際に、その当時男性では珍しかった保育士になるために大阪で学びました。」

大阪の保育所では、女性だけではなく男性も1人ずつはいるようになってきた時代でしたので、大阪の保育所で働くという選択肢もあったものの、卒業後は大阪ではなく京丹後市に戻り、公立の保育所に勤めたそうです。

「京丹後市では、当時、女性の社会と思われていた保育所に男性が飛び込むことは、ほんとに大きなチャレンジでしたので、 だいぶ噂になりました。」

その保育所に3年弱勤めた後、知り合いを通じて地域の高齢者総合福祉施設の方に誘いがあり、そこで働いたといいます。

「そこでつまづいたのが人材の育成です。老人ホームなどの施設でハラスメントなどに直面して。職業スキルを上げると同時に、心理学や社会学を学びながら、どうしてこのような問題が起きて、人材育成がなかなかうまくいかないのかを考え始めました。」

そして平成23年に独立し会社を設立。「のんののんな」はイタリア語で、おじいちゃんおばあちゃんという意味。会社設立の準備を進めていた頃、くも膜下出血で倒れて要介護の状態になった女性に出会った際に、その方のご主人と知り合い、話をする中で起業したい思いが噛み合い、さまざまなアドバイスをもらう中、名付けてもらった会社名だといいます。

就労支援のきっかけになった人との5年間がもたらしたもの

ひきこもりの支援は京都府の事業がきっかけだったと岡垣さんはいいます。

「自社でしっかりと人材を育てていきたいという思いがありました。弊社が一番大事にしたのは、お年寄りや家族の方たちとの心の通い合いです。資格を取ってスキルを積まれると、スキルが邪魔をしてしまうケースが医療介護にはあります。そのようなケースをなんとかできないかと考えていたときに、京都府の緊急雇用対策の雇用型事業という、思うように就職できない方を正社員として雇いながら、カリキュラムを作成しそれに沿って育成するという事業を受託しました。そこに介護福祉士資格を持ったひきこもりの女性が応募してこられたことがきっかけです。」

通常であればリスクが高いので採用しないケースだというものの、職員と相談をしながら、挑戦してみたといいます。

「結論を言えば育てるのに5年かかりました。本当にいろんなことを試した中で、彼女の就業を困難にしている要素を直すのではなく、それを補うためにしっかりと職員と時間をかけてサポートしました。その結果、その女性がなんと、今、介護の中でも一番難しいと言われている訪問介護をしています。」

サポートし続けた職員たちも成長し、「次どんな人がきてくれるのかな」と楽しみに思うようになったのも良かったと岡垣さんはいいます。

その後、岡垣さんはこの取り組みを自社の事業として形にしていきました。「のんののんな」は介護以外の事業もしているため、人と対面するのが難しい人には調理の下処理や片付けなどをしてもらってみたり、配食サービスを自社で行っているため、一緒に配達に行ってみるなど、別々のプログラムを組み合わせることもでき、現在では就職率が100パーセントになっているそうです。

「100パーセントと言っても自社雇用も多いです。訓練が終了したから終わりではなく、こういう地域で、人と人とのつながりが深いので、例えば短期間自社で雇用して、そこから他の会社などに紹介していくといったことも丁寧にやっていきました。」

この事業の基本的なプログラムは介護職員の初任者を育てるというものですが、 全然違う分野でも関心があれば、そうした分野に就職できるよう、支援を進めていくといいます。就労支援後に、ホームセンターやほかの会社へ就職していく人も多いそうです。

「ある人は、はじめは配食サービスで職員と一緒に高齢者のお宅などに配達していて、自動車教習所にも通ってもらいました。配達をしながら、職員と一緒に訪問介護を受け入れてくれる先を探していたら、顔なじみになった人から『あんた来て』と依頼があったんです。それがきっかけで、今訪問介護をされています。そういう事例がほかにもあります。」

ソーシャル・コミュニケーションケアの効果

以下の組織図に横断的に記載されているように、「独自の地域包括的ソーシャル・コミュニケーションケアサービス提供体制」を大事にしていると岡垣さんはいいます。

「ひきこもり支援を含めた支援機関同士がうまく包括されてない、途切れているという中で、民間でやるしかないと考えてはじめました。私たちはただケアを提供するだけではなく、ちゃんとしたコミュニケーションを取ります、ということです。『私は訪問介護の職員だから、そこは関係ないです』と言っちゃうとコミュニケーションケアが終わってしまうので、それぞれは必ずつながっていることを職員に意識してもらう意味で、定期的に研修を重ね、外部の訓練も受けながらやっています。」

コミュニケーションケアが支援者にとっても効果的だと感じているそうです。

「先ほどの話題に登場した訪問介護をしている女性は、前の職場で、常勤の介護職は完全に無理だろうとレッテルを貼られていました。指導や育成をしてないのにレッテルを貼るわけです。ちゃんと手をかけたことによって、本人が成長しただけでなく、私たちも成長させられた。育てるんじゃなく、育てられています。その手応えを感じたのが、まず一番大きかったです。教えるんじゃないんだ、教えられているんだということです。サービスだけではなく、指導力のレベルが上がりました。」

岡垣さんは職員同士のコミュニケーションにも着目したといいます。

「さまざまな複合施設の事例を聞くと、同じ場所なのに情報共有がされていないという声を耳にします。そうならないために、職員同士でのコミュニケーションをちゃんと取るように意識しました。」

「のんののんな」ではグループLINEなどを活用しているといいます。

「福祉職員は、忙しさからか、コミュニケーションが苦手という方もいます。だから私たちはあえて早い時期からLINEを活用し、内容によっては個室でしっかり話す機会をつくりました。そのきっかけをつくってくれたのはやっぱり訓練生ですね。」

「のんののんな」の活動に関心をもった方はぜひLコネクトまでご連絡ください。どんな内容でもお気軽にどうぞ。

取材・文/狩野哲也
取材日/2022.07.05

団体について

  • 名称

    株式会社 tango nonno nonna
    https://tango-nonno-nonna.com/

    定休日:日曜・祝日
    受付時間:8:30~18:00

  • 所在地

    〒629-2502 京都府京丹後市大宮町河辺1050

    京都丹後鉄道宮舞・宮豊線「京丹後大宮駅」から徒歩約30分

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